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胃袋でつながる仲

ここ数年、東京に行く度に寄らせていただく家があります。

サチコさんとご主人のテージさんが住んでいる、浅草の『テジ家』と呼ばれているお宅。

最初にサチコさんと出会ったのは5年前の個展。ちょうどMonohanakoで独立して駆け出している頃でした。サチコさんが器を見る眼、取る手で瞬間にこの人は料理をする人だ!と直感しました。その翌日、また来てくれて、器の使い勝手が良い、と褒めてくれたのもうれしかったのですが、それよりも、是非うちに食事に来て欲しいとご招待を受けたのがなによりもうれしかった。日本では人の家に食事に呼ばれることがずっとなかったのでちょっぴり寂しさを感じていました。

『うちでよかったら、もし時間があれば一緒に食事をしませんか?狭いうちですけど。』

なんて気軽に、オープンに自分の家に招待してくれたのが心に響きました。

料理は人を表すと言うけれど、サチコさんの料理は優しい。食べると優しい気持ちになれる。けれど、しっかりホネのある味。シンプルだけど、奥深い味。五感を研ぎ澄ませた料理。味覚のツボがドンピシャでフィットする人っていそうでなかなかいません。一晩を共に過ごしただけで、胃袋で深くつながってしまう仲になってしまいました。以来、スッカリ餌付けされてしまったネコのように、東京へ行く度に『テジメシ』のお世話になっています。

テジ家にも唐津へお越しいただき、そのお返しをするつもりが、サチコさんとテージさんにも台所に立ってもらい、みんなでわいわい食事をしながらバッカスのように陽気な夜を一度となく過ごしました。

とまあ、こんな感じで胃袋でつながった絆は太るばかり。

さてさて、プロダクトデザインの業界で長年活躍されている手島啓介さんが、今回Studio Tejimaを立ち上げられると共にサチコさんとのパートナーシップでGallery Teをオープンされました。その第一回目の展示会を私がやらせていただくことになりました。『デザイン』という視点からモノ作りをされるテージさんとの意見交換は興味深く、是非コラボをやってみたいとおもいました。

今回、蓋:Studio Tejima、胴体:monohanakoの茶壷が登場します。

一方、今回の器のコレクションは手島夫妻のご意見を参考にしながら、『ベーシックな器』に焦点をしぼりました。なぜ、この器、この形状が料理が映えやすいのか、盛りやすいのか、使い易いか、という使い手の視点から客観的に作品を見つめなおす良い機会となりました。Studio Tejimaとの新しい試みと、新たに原点を振り返ったmonohanakoをご高覧いただけると光栄です。

二〇一二年、四月吉日

中里花子拝

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